平成12年7月27日

 

大阪城薪能を観ました

寺倉 正高
 夏の夜のかがり火に浮かぶ幽玄の世界を楽しみました……

 昨夜(7月26日)大阪城西の丸庭園で、喜多、観世、大蔵流による「第20回大阪城薪能」が行われました。西の丸庭園は春のお花見やお茶会でお馴染みです。仕事もそこそこに駆けつけるともう始まっておりました。芝生の上に敷かれたシートに、たくさんの人が座っています。約9000人とのことでした。まだまだ明るいです。涼しい風が心地良いです。前日の雨のおかげです。とんぼが飛んでいます。せみが鳴いています。いい場所を見つけて座りました。パンフレットをめくると字が読めます。

 幕開けの「絵馬」は喜多流の人間国宝粟谷菊生さんが天照大神を演じておりましたが、少ししか見られませんでした。残念。やがて落日と共に能舞台の薪に火が入り、観世流の片山九郎右衛門さんの能「鷺」、大蔵流のこれまた人間国宝の茂山千作さんらによる狂言「佐渡狐」が披露されました。だんだん暗くなるにつれて薪の赤が映えます、照明が鮮やかです。瞼とじれば笛、太鼓、鼓の音が心に染み入ります。自分が何処で何をしているのか忘れそうになります。

 最後に、堂本正樹さんの作、演出による能「大阪城」が初上演されました。淀君と千姫をそれぞれ観世流の梅若六郎さんと大槻文蔵さんが演じ、他の流派交えて約30人ほどの熱演で、豊臣家の栄華と滅亡が繰り広げられます。衣装は豪華絢爛。スモークも炊かれ、バックは茂る樹々、後ろに石垣と見事にライトアップされた大阪城。これ以上は何もいりません。あとは感動とため息だけ。

 すべてがすんで余韻に浸っていると、ドーンドンドーン。大川の方を見上げると綺麗な花火。1日遅れの天神祭りでした。素晴らしい一時を過ごしました。

 

 motomu60@tf6.so-net.ne.jp Motomu Furugaito

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